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シューベルト/アルペジオーネ・ソナタイ短調D821

シューベルト/アルペジオーネ・ソナタイ短調D821_a0085805_13403483.jpgram's café menu No.627 : 室内楽曲

演奏 : ピエール・フルニエ(vc)
      ジャン・フォンダ(p)

(  国内盤 LP DGG MGW 5244  )







 ようやく初夏らしい日射しに恵まれ、こころ安らぐ穏やかな週末です。今年の勤務は、週19コマもの出番はあるものの、仕事上の責任の重さは遥かに少ないので、気持ち和やかに過ごすことができます。ありがたいことです。

 さて今日は、シューベルトの《アルペジオーネ・ソナタ》です。アルペジオーネという楽器は1823年にウィーンのシュタウファーによって発明された楽器で、「ギター・ダモーレ」と呼ばれたこともあったようです。ギターに似た形をし、6本の弦をもつチェロ風の楽器で弓を使って弾いたようです。しかし、当時すでにチェロという楽器が独立性を確保していたこともあり、このアルペジオーネは全く普及せずに消え去ってしまいました。

 この曲は、シューベルトが1824年にシュタウファーからの依頼を受けて、アルペジオーネ奏者のシュースターのために作曲したものです。しかし、アルペジオーネという楽器が忘れ去られても、この愛すべき旋律に満ちた作品だけは「代用しうるチェロ・パート」をつける形で1871年に出版されました。
 ところで、この曲が書かれる少し前のシューベルトは、健康を害し気分が鬱ぎ込むような生活だったのですが、その年の夏、音楽教師の職を得てハンガリーへ赴いて、ようやく快適な日を過ごせるようになりました。そしてその夏、この《アルペジオーネ・ソナタ》を書きました。そのため何気ないチェロの語り口の中に、明るさと暗さの気分的な対比が見えてきます。今日エントリーするフルニエの演奏は、ロストロポーヴィッチのようなスケール感や力強さはありませんが、穏やかで淡々としたチェロには優美な魅力があります。雲間から僅かな初夏の日射しを受けたような、ゆるく明るい気分はとても心地いいのです。


   同曲異演盤 : ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(vc)&ベンジャミン・ブリテン(p)



今日の写真 : 密生する    仙台市野草園
                         
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                                    アブクマトラノオ

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                                    ヒトリシズカ                 

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by fragile28 | 2010-05-08 15:46 | 室内楽曲


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