ram's café menu No.627 : 室内楽曲
演奏 : ピエール・フルニエ(vc) ジャン・フォンダ(p) ( 国内盤 LP DGG MGW 5244 ) ようやく初夏らしい日射しに恵まれ、こころ安らぐ穏やかな週末です。今年の勤務は、週19コマもの出番はあるものの、仕事上の責任の重さは遥かに少ないので、気持ち和やかに過ごすことができます。ありがたいことです。 さて今日は、シューベルトの《アルペジオーネ・ソナタ》です。アルペジオーネという楽器は1823年にウィーンのシュタウファーによって発明された楽器で、「ギター・ダモーレ」と呼ばれたこともあったようです。ギターに似た形をし、6本の弦をもつチェロ風の楽器で弓を使って弾いたようです。しかし、当時すでにチェロという楽器が独立性を確保していたこともあり、このアルペジオーネは全く普及せずに消え去ってしまいました。 この曲は、シューベルトが1824年にシュタウファーからの依頼を受けて、アルペジオーネ奏者のシュースターのために作曲したものです。しかし、アルペジオーネという楽器が忘れ去られても、この愛すべき旋律に満ちた作品だけは「代用しうるチェロ・パート」をつける形で1871年に出版されました。 ところで、この曲が書かれる少し前のシューベルトは、健康を害し気分が鬱ぎ込むような生活だったのですが、その年の夏、音楽教師の職を得てハンガリーへ赴いて、ようやく快適な日を過ごせるようになりました。そしてその夏、この《アルペジオーネ・ソナタ》を書きました。そのため何気ないチェロの語り口の中に、明るさと暗さの気分的な対比が見えてきます。今日エントリーするフルニエの演奏は、ロストロポーヴィッチのようなスケール感や力強さはありませんが、穏やかで淡々としたチェロには優美な魅力があります。雲間から僅かな初夏の日射しを受けたような、ゆるく明るい気分はとても心地いいのです。 同曲異演盤 : ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(vc)&ベンジャミン・ブリテン(p) 今日の写真 : 密生する 仙台市野草園 アブクマトラノオ ( 写真をクリックすると、少し大きな画像でご覧いただけます ) ヒトリシズカ ( 写真をクリックすると、少し大きな画像でご覧いただけます )
by fragile28
| 2010-05-08 15:46
| 室内楽曲
|
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