ram's café menu No.262 : 器楽曲
演奏 : シギスヴァルト・クイケン(baroque vn) ( 輸入盤 LP HMF DHL 20401.03 ) バッハの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ』全6曲を弾きこなすには、独奏ヴァイオリンを和声的かつ多声的に扱って4本の弦を同時に鳴らすという超絶的な技巧を必要としています。テクニックが巧いということ以上に、その響きの中にバッハの厳しく深い精神とか温かな人間性が宿っていなければダメなんでしょうね。ヴァイオリニストにとって《聖書》のような存在というのも頷けます。 しかし難曲といわれるこの6曲を、2回も録音したヴァイオリニストが結構いるのには驚きました。シェリング、ミルシテイン、クレーメルそしてS.クイケンなどすぐ思い出せます。そしていずれも円熟期に近い2度目の録音の方が、演奏もいいとの評判です。 ところで、今日の私のお薦めはS.クイケンの1981年の旧録音です。レオンハルトとの『バッハ/ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ集』(1973年録音)から8年、彼にとっては満を持しての無伴奏だったに違いありません。楷書で丁寧に演奏していきますが、古楽器ゆえの重さ・窮屈さも感じました。しかし朴訥と語られる彼のヴァイオリンは、何度も聴きこむほどに味わいが増してくるのです。そして旧録音ではヴァイオリンが少しオン・マイク気味に捉えられていますが、心地よい残響が後方へす~っと消えていき、すっきりとしています。細かなニュアンスや、響きなどがわかる画期的な録音だったと思います。 さて、2000年の新録音は、使用している楽器は旧録音のときと同じ1700年頃のミラノのジョヴァンニ・グランチーノで、弓も同じようです。聴いてすぐに気付くことは、残響がとても豊かになっているということです。詳しくはまた別の機会にゆずることにしますが、私には新録音のCDよりも旧録音のこのLPの方に、より強く惹きつけられています。 今日の写真 : 振り返れば
by fragile28
| 2008-01-14 20:47
| 器楽曲
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